度重なる出張で少し疲れたというか、出張そのものに飽きてきたので、気分を変えようと思い久しぶりに村上春樹を手に取り新幹線に乗り込んだ。普段はめったに中古の文庫を買うことはないのだが、珍しく書庫の奥のほうにブックオフで買ったと思われる村上の旅行記の文庫を見つけ何気なくカバンに放り込む(いつ買ったのか思い出せない310円の300ページほどの文庫だ)。 読み進めているうち、最後のほうで、角が折り込まれたページがあることに気がついた。そこには黒のボールペンでしっかりと囲みがされたパラグラフ。「人は年をとればどんどん孤独になる。ある意味では僕らの人生というのは孤独に慣れるためのひとつの連続した過程に過ぎない」。シダー・ウォルトンのNew York Timesを聞きながら、うんうんと納得していたら、もうすぐ東京であった。早春の休日の朝の些細な出来事である。