先日の新聞に「文系学生にも数学を」という記事が載っていた. 日本の経団連の方々の要望だそうである. うーんと思っていたのだが,東京で本屋さんをぶらついていたら,センスメイキングという本に出会った.こちらはアメリカの話であるが,テクノロジー或いはデータ至上主義の今こそ文系の力が目利きとして重要だという.似たような話であるが,根本は大きく違うように感じた.日本では文系学部関連の予算削減が報道を賑わしていたこともあり,実利というか比較的目先の功利を目指す方向となっていることにいささかの懸念をもつ.先日学生さんと話をする機会があったが,学年の若い学生さんは医学部は理系ですよね,と言うのに対して卒業近い学生さんは,いや,医学部はかなり文系に近いと思うよ,といっていたのが印象的であった.そもそも理系とか文系とかの分類がどうかとは思うが,医学や医療においても文化教養学的な知恵は大切だなと思う. このような意味で,少なくとも理系の中での文系的な知恵の大切さを,ちゃんと学生さんは理解している.このことを聞いて私は少しほっとした覚えがある.日々の仕事のなかでモチベーションを作り出すのは,決してデータのみではなく,何らかの文脈に裏打ちされた”わくわく感”であり,これをどう植え付けて行くかが我々大学人の大切な仕事のひとつだと思うのだが.
一言:福島にもようやく初雪の便りが届きました.いつもより遅めの雪です.
「外科室の窓にあらはる星冴ゆる」
Crann Clog