腫瘍免疫領域におけるCancer immunity cycleと呼ばれる考え方はとても有名になった(Chen DS, Mellman I. Oncology meets immunology: the cancer-immunity cycle. Immunity. 2013 Jul 25;39(1):1-10.).細かいところはさておき,私もこの考え方には大いに賛同するところがある.癌に対する免疫が効率的に働くためにはこのcycleが回る必要があるというものである.このcycleは7つのステップに分類されている.(先ごろUpdateされて私が研究しているTLSが付加されたことは嬉しい出来事であった.)
ともかくも, うまく考えたものである.
さて,しばらく前になるが久しぶりで私の好きな街,盛岡に行く機会があった(また盛岡話か,と思われる読者もいらっしゃるかもしれないが,また盛岡話である).盛岡はニューヨーク・タイムズが2023年旅に行くべき街の世界で第二位に選ばれているが,私にとってはとっくの昔から暇があれば旅にいくべき第一位の街である.
その理由のひとつは大好きな宮沢賢治を感じることができるからである.とはいえ今回は宮沢賢治のゆかりは置いて仕事を終え,大好きなジャズ喫茶に向かった.先客は一人,静かにジャズと向き合っているようであった.
コーヒーをオーダーし,こちらも音に向かった.マイルス・デイヴィスの I fall in love too easilyである.静かに,それでいて強く心を突き刺すようなマイルスのトランペットを堪能した.そういえば,アルバム名はSeven steps to Heavenではなかったか?
天国への7段の階段というわけである.
何でも7つくらいのステップが大事なんだろうな,などとぼんやりと考えながらしばらくマイルスに没頭した.お店を出る頃には街はすっかり暮れかかっていた.本当はこのあたりで帰らなくてはならなかったのだが,なんだかこの街を離れるのが寂しくて,近くのバーに寄ることとした.実は数年ぶりに訪れるバーである.何を頂こうか考えているとINAZOはどうですか,と言われたので勧められるがままにオーダーした.
もちろん初めてであったが,山ぶどうジュースの落ち着いた赤の色合いが夏の終わりにしっくりと来た.
すっかり暗くなった街に出て,駅までの道をのんびり歩いた.マイルスのトランペットのせいか,そしてINAZOのせいか少しだけ酔がまわっていた.
今夜のうちに帰らなくてはならないと思って,夜空を見上げると銀河鉄道が見えたような気がした.
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