top of page

Seven Steps

  • hirosquirrel
  • 2024年1月18日
  • 読了時間: 2分

腫瘍免疫領域におけるCancer immunity cycleと呼ばれる考え方はとても有名になった(Chen DS, Mellman I. Oncology meets immunology: the cancer-immunity cycle. Immunity. 2013 Jul 25;39(1):1-10.).細かいところはさておき,私もこの考え方には大いに賛同するところがある.癌に対する免疫が効率的に働くためにはこのcycleが回る必要があるというものである.このcycleは7つのステップに分類されている.(先ごろUpdateされて私が研究しているTLSが付加されたことは嬉しい出来事であった.)

ともかくも, うまく考えたものである.

 

さて,しばらく前になるが久しぶりで私の好きな街,盛岡に行く機会があった(また盛岡話か,と思われる読者もいらっしゃるかもしれないが,また盛岡話である).盛岡はニューヨーク・タイムズが2023年旅に行くべき街の世界で第二位に選ばれているが,私にとってはとっくの昔から暇があれば旅にいくべき第一位の街である.

その理由のひとつは大好きな宮沢賢治を感じることができるからである.とはいえ今回は宮沢賢治のゆかりは置いて仕事を終え,大好きなジャズ喫茶に向かった.先客は一人,静かにジャズと向き合っているようであった.

コーヒーをオーダーし,こちらも音に向かった.マイルス・デイヴィスの I fall in love too easilyである.静かに,それでいて強く心を突き刺すようなマイルスのトランペットを堪能した.そういえば,アルバム名はSeven steps to Heavenではなかったか?

天国への7段の階段というわけである.

何でも7つくらいのステップが大事なんだろうな,などとぼんやりと考えながらしばらくマイルスに没頭した.お店を出る頃には街はすっかり暮れかかっていた.本当はこのあたりで帰らなくてはならなかったのだが,なんだかこの街を離れるのが寂しくて,近くのバーに寄ることとした.実は数年ぶりに訪れるバーである.何を頂こうか考えているとINAZOはどうですか,と言われたので勧められるがままにオーダーした.

もちろん初めてであったが,山ぶどうジュースの落ち着いた赤の色合いが夏の終わりにしっくりと来た.

 

すっかり暗くなった街に出て,駅までの道をのんびり歩いた.マイルスのトランペットのせいか,そしてINAZOのせいか少しだけ酔がまわっていた.

今夜のうちに帰らなくてはならないと思って,夜空を見上げると銀河鉄道が見えたような気がした.



ree

 
 
 

最新記事

すべて表示
「彼岸との交感 ― 生の淵にて」

この夏、私は「死」という輪郭なき存在と、いく度も静かにすれ違った。それは喪失でも絶望でもない。むしろ、時空の裂け目から滲み出る、生の根底にある「異質な気配」との邂逅であった。 恐山にて、風は語らずして語った。硫黄の匂いと、岩場に散る風車の回転音。そこには死者の沈黙があったが...

 
 
 
アクラの風

以前、がん免疫療法の父と呼ばれたWilliam Coleyと野口英世との接点に関するエッセーを書いた。それからいくつもの論文や著作をみてみたけれど、結局のところ接点は見つかっていない。生成AIに聞いてみた。もし二人に何等かの接点があったら?そうしたら以下のエッセーを作ってく...

 
 
 
あなたを覚えてる

『あなたを覚えている』 最初に出会ったのは、静かな場所だった。 光は柔らかく、水音のようなリンパの流れが、遠くで揺れていた。 彼は小さなT細胞。まだ誰のことも知らず、何ひとつ戦ったこともない。 胸腺という聖域で、彼は夢を見ていた。...

 
 
 

Commenti


bottom of page